洞爺湖サミットで主要テーマの一つとなった地球環境問題。CO2排出量を削減するため、さまざまな取り組みが行われる中、東京大学は本郷地区の工学部2号館を対象に施設の設備制御管理システム同士をネットワークで接続し、ITを活用して省エネルギーを実現しようというプロジェクトを立ち上げた。
東京都で一番多くの電力を使っている事業所はどこだろう。実は意外な場所、東京大学本郷キャンパス内にある東大工学部なのである。研究用の実験機材やコンピューターなどが数多く稼働する東大工学部。1つのフロアで1日に使用する電力量は、なんと小規模の工場レベルに相当するという。換算したCO2の排出量も必然的に多く、工学部全体を合計するとその排出量は羽田空港や都心の高層ビルなどをも上回り、東京都の中で最もCO2を排出する事業所になるというのである。
今回取り上げる"グリーン東大工学部プロジェクト"は、ITを活用して同キャンパスのCO2排出量を削減しようというものだ。2015年までに15%、2030年までに50%削減という具体的な目標を掲げており、その最初のステップとして同プロジェクトが取り組むのが、「HD-PLC」を使った使用電力の"見える化"だ。これは2007年より注目され、経済産業省が積極的に推進している「グリーンIT」、つまりITを活用して環境負荷を低減しようという考え方に基づいている。グリーン東大プロジェクトを通じて、これを実現する先進的なモデルケースを作ることで、グリーンITの普及にも効果があると考えてのことのようだ。
● 東大プロジェクトが最初に取り組む使用電力の"見える化"。機器の使用電力を個別に計測し、PLCアダプターを通じて集めて、分析する
機器単位の使用電力をリアルタイムでグラフ化
プロジェクトではまず、サーバーなど工学部2号館内の計測対象となる機器のすべてに、市販の電力メーターを取りつける。電力メーターにはPLCアダプターをつないでおき、電力メーターが計測した機器の消費電力量を電力線経由で管理用のパソコンに送る。パソコンの画面には、各機器の使用電力が、リアルタイムで表示され、“見える化”する仕組みだ。
使用電力を分電盤単位で“見える化”するシステムは既にあるものの、「HD-PLC」を使うことで“見える化”を機器単位にまで細かくし、設置場所やユーザー単位で電力の消費状況を一気に俯瞰(ふかん)できるところに大きな違いがある。
● 6月開催の「Interop Tokyo 2008」で公開されたデモ。計測対象の機器(テレビ)に電力メーターとPLCアダプターを接続。電力線を経由して管理用パソコンの画面に使用電力がリアルタイムで表示され、“見える化”する
このシステムは、使用電力を刻々と変化するグラフで“見える化”するものの、節電の重要性を声高に訴えかけるだけでは、節電への高い意識を一人ひとりのユーザーにずっと持たせ続けることは容易ではない。しかし自分たちが使っている電力が頻繁にレポートされるようになれば、自然と問題意識をもち、さらには主体的に節電に取り組むようになる。プロジェクトでは使用電力の“見える化”を実現した後、個別の機器をネット経由で制御して節電するプロジェクトにも乗り出す計画だが、まずは基本である節電の習慣を、「HD-PLC」を使ったシステムで一人ひとりに身につけさせようとしているのである。
プロジェクトで使用するPLCアダプターは、電力メーターとの接続用にシリアルポート*を内蔵したタイプで、今後の製品化も検討している。パナソニック コミュニケーションズによると、電力メーターとの一体化や、電力メーターとPLCアダプターの両方を機器に組み込むことなども計画しているという。
*シリアルポート:順番にデータを送る方式を採用したコンピューター用のインタフェースのこと。具体的にはRS-232Cなどがある。








