どこでもネットワークにつながる「ユビキタス」社会を、もっとも簡単な方法で実現する技術として、電力線を利用するPLC(Power Line Communication)に注目が集まっている。2007年9月、日本発のPLC通信方式である「HD-PLC」(高速電力線通信)の普及と互換性向上を目指す団体「HD-PLCアライアンス」が発足。本格的な普及の波を巻き起こすとともに、国際標準化への動きでも先頭を走っている。「HD-PLC」は普及の先にどのような世界を描いているのだろうか。HD-PLCアライアンスの小林英次会長へのインタビューを2回にわたってお送りする。
●——そもそもPLCとは何でしょうか。どんな技術で、どんなメリットを消費者にもたらしてくれるのでしょうか。
● 国際的な展示会でも積極的にアピール。写真は今年1月ラスベガスで開催されたCESでの様子
小林: ひとことで言うなら「電力線を使った通信」です。どこの家庭にも、どの部屋にもある電源コンセントを使って、家じゅうの機器をネットワークにつなごうという技術です。
パソコンだけでなくテレビやゲーム機など、あらゆる機器がインターネット接続機能を備えようとしています。しかし機器をネットに接続するには、家の中にケーブルを張り巡らせるか、設定に手間がかかったり、家の構造で接続性が左右されたりする無線LANを使わなくてはなりません。ADSLやFTTHなどブロードバンドの普及で高速ネットワークは家庭の入口まで来ているのに、つなぎたい機器まであとわずかというところで行き詰っている面があるのです。
PLCは既存の電力線に、データ通信用の高い周波数の信号を重ねることで、電力線経由でネットワークにつなぐ技術です。PLC対応機器を介して普通のコンセントに接続するだけで、インターネットにつながるようになります。複雑な設定も工事も不要です。PLCには現在世界で主に3つの通信方式がありますが、国際標準化が進んでいます。その中心的な存在が「HD-PLC」という通信方式なのです。
高性能を簡単に
●——「HD-PLC」の特長はどんなところにあるのでしょうか。
小林: 一つはデータの伝送をおこなう変復調方式に「Wavelet-OFDM」という、周波数の利用効率が高い方式を使用している点です。大量のデータを短時間で送ろうとすればするほど、当然のことながらノイズなどの影響できちんと送れないケースが増えてしまうものなのですが、この方式なら上手に解決することができます。結果的に、通信速度(PHYレート)毎秒210メガビットという音声や映像も送れてしまうレベルの性能を実現できたのです。
電力線にはざまざまな家電製品がつながっていて、PLCの通信性能に影響をあたえるノイズの発生原因になっています。このノイズの状態を、常によく見極めておいて、高い周波数で送るデータの量やタイミングを調整することでデータ通信が効率的に、高速に行えるような工夫を凝らしているのですね。
もう一つは、米国政府標準の暗号化技術「AES(Advanced Encryption Standard)」128ビットの強力なセキュリティ機能を持ちながら、ボタンひとつで設定が可能という使いやすさです。無線LANによっては、パソコンでのセキュリティの設定が難しいためにうまく接続できなかったり、中にはセキュリティの設定をしないままで使っているユーザーも見受けられます。無線LANの設定は一般の人にとって少し難しいため、このままでは、機器をネットワークにつなごうという意欲も薄れてしまうでしょう。ユーザーだけでなく、メーカーも販売店もそれをサポートするのは大変です。「HD-PLC」を通じて家電感覚で簡単に設定でき、しかも安全につながる環境を提供することで、パソコンやテレビだけでなく、あらゆる家電をネットワークで統合的に制御する時代が訪れると考えています。
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